平成20年度文化庁演劇部門新人賞や、第18回読売演劇大賞 優秀男優賞(『BLUE/ORANGE』『春琴』の演技による)を受賞するなど、成河(ソンハ)の表現力は高く評価されている。その背景には、演出家との関係の作り方、その絶妙な距離感の取り方があるようだ。『クレイジーハニー』のリハーサルにおいて、作と演出を手がける本谷有希子との現場で心がけていたことを次のように話していた。
「本谷さんは演出をするだけではなく、作品を書いている方なんで、稽古場でのリハーサルというのも、書いている作業の一部だと思うんですよ。そこで彼女にどれだけインスピレーションを与えられるか。どう演じるかを迷ったときに、どうしたらいいかをすぐ彼女に聞いてしまわず、自分で考えて何かを提示できるか。そういう作業を通じて、一緒に作品を完成させられたら素晴らしいと思います」
かつて、成河は「北区つかこうへい劇団」に所属していたことがある。「声を大にして言えるほどの期間、つか先生とご一緒させていただいてはいませんが」と本人は前提するが、演劇への取り組み方に関して、そこで学んだものは多いと言う。つかの代名詞ともいえる「口立て」という方法。稽古場で役者から生の言葉を引き出し、戯曲を練り上げていた制作スタイルが、成河の演技への取り組み方に大きな影響を与えた。
「ものを作ろうとする人たちは、演技をする僕らもそうですけど、他人と出会って、何かを一緒に作り上げようとしていると思うんですよ。そういうときに、ただ相手の言うことだけを聞いてしまうのが一番の失敗の原因になる。作家や演出家さんも喜ばないし、共演者も喜ばないし、自分もお客さんも喜べない。相手から何かを提示されたら、“あ、そう来る? じゃあ、自分はこうしてみようか”という風に自分も何かを出していけたら、そこで初めて一緒に作り上げたと言えるのかもしれません」
実験的な作品への参加や、テレビや映画など映像作品への出演も含め、活動の領域を広げていく成河に注目し続けたい。
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