若いころには、エルトン・ジョンやオハイオ・プレイヤーズ、ファンカデリックなど、ジャンルを問わずあらゆる音楽に夢中になったというデリック・メイ。ホアン・アトキンスやケビン・サンダーソンとともにシーンを築き上げ、テクノ・ミュージックは世界中に広まった。デトロイトから生まれた音をきっかけに、世界各地でテクノ音楽の新しい表現は生まれ続けている。だが、デトロイトは「面白くなくなってしまった」と語る。「フォードもクライスラーもGMの衰退で、急激に仕事がなくなった。人口も減ったし、街は死んでしまった。非常に残念なことだ。日本でも、もしトヨタに何かがあったら名古屋で大惨事が起こるだろ? デトロイトでは起こってしまったんだ」。
デトロイトのシーンは衰退したかもしれない。だが、デリック・メイはあくまでポジティブに、Transmat Recordsでのプロデュース業とDJ活動を続ける。
「今多くの人は、デジタルの機材を使って、ミスのない完璧なものを作ろうとする傾向がある。だが私は今回のMIX CDでも、ワンテイクでレコーディングを終わらせた。よりナチュラルな感覚で音をつないで、より人間的な感覚を残したCDにしたかったからね」ストイックでありながら、人間的な体温をどこか感じさせるデリック・メイの音楽表現。そのバランス感覚が、フロアを湧かせ続ける。
中島良平