写真は瞬間の場面を写し取るのみではなく、そこに写されたものの背景や時代性など、関連した様々な事象を連想させてくれる記録メディアである。そのことを実感させてくれる作品展が、沢渡朔の作品展『KINKY』(BLDギャラリーにて、1月31日まで開催中)だ。「ポジの保管もきちんとしていなかったから、いくらか褪色しちゃってるプリントもあるけど、まあ、時代も感じられていいかなと思ったんですよ」と、沢渡は照れるように笑いながら、今回の作品展示について語ってくれた。画面にはたしかに、当時の晴海など、いまとはまるで異なる景色の中に荒張弘子の姿が写っていて、また、撮影者として彼女とセッションを行った沢渡の目線も追体験できる。銀塩写真が物質であり、いまのデジカメのデータとは本質的に異なることがわかるからだろうか。被写体と撮影者を取り巻く空気が画面に保管されていて、展示空間を巡ると、彼らと同じ空気を吸っているかのような疑似体験をさせてくれる。そして、写真集としてまとめられた『KINKY』を手に取ると、壁面に展示されたときとはまた異なる距離感で、作品を味わうことができる。どのように動きながら撮影を行い、コミュニケーションがとられていたのか。『KINKY』を見ていると、フォトセッションのリズムにまで想像が広がる。
中島良平
BLDギャラリー公式サイト