ウミット・ベナンの経歴はかなり特殊だ。スイスの全寮制高校を卒業したのち、アメリカのボストン大学で経営学を専攻。卒業後には、ミラノのマランゴーニ、ロンドンのセント・マーティンズ、ニューヨークのパーソンズという3つのアートスクールで、パターンメイキングからスタイリングまでファッションを学ぶ。幼少の頃にはイスタンブールで生活していたこともあり、インタビュー中で「ひとつのカルチャーに固執したくない」と語っていた背景には、この国際的な経験が横たわっている。
「父親はイスタンブールでテキスタイルの会社を経営していたので、イスタンブールで過ごした子どものころから、将来はファッションの仕事に就きたいと思っていた。だから、アートへの興味をずっと持ちながら、広告やPRなどのコミュニケーションについて学ぶためにボストンへ行き、卒業後にはファッションを学び始めた。父のもとで職人的な技術にはいくらか触れていたので、クリエイティブな部分を伸ばしたいと考えたんだ。3つのスクールで3つのテイストを学び、また3つの都市で過ごすことができたのは貴重な経験だ」
各地の「差異」を知ることが、学校を選ぶ動機になった。コレクションの発表を開始してからも、トルコ人としてのエスニックな要素とイタリアのスタイルを組み合わせたり、クラシックとコンテンポラリーを同居させて独自のスタイルを生み出すなど、過去を敬う視線を持ちながら過去に縛られない創作を続けている。
「コレクションの6ヶ月前に青写真を思い描き、デザインを開始する。それから試作を繰り返しながら作業を続けるのだが、最終的に服が完成して、撮影をしてルックブックができあがったときは本当にハッピーだ。頭の中にだけ存在していたクリエイションが、手に触れられるプリントになっている。小さな写真なのだが、その背景にすごくたくさんの時間とストーリーが隠されているから、最高のギフトを受け取った気分になるよ」
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