若者たちの普段の言葉づかいと、日常的な身体所作を誇張しているような/していないような身体表現―。チェルフィッチュの演劇作品を表現する常套句として使われてきた言い回しだ。だが、新作『わたしたちは無傷な別人であるのか?』で描かれるのは、世間で“勝ち組”といわれているような30代のカップルの生活。独特な身体表現は健在だが、シーンをどのように浮かび上がらせてくるのか、そのアプローチの角度が変化した。
『フリータイム』のリハーサルのときには、作と演出を手がける岡田利規は、役者たちに対して「イメージ」という単語を使っていた。セリフを「読む」のではなく、普段喋るのと同じように言葉を発するように。言葉に引っ張られることなく、身体の動きを生み出すように。その発する根源が、「イメージ」だと。しかし今回、岡田が強調していたのは、「言葉を観客にねじ込む」「受精させる」こと。演劇行為とは言葉の力を大前提にしたものだということを確信し、その視点からどのような演出/執筆を行うか。『わたしたちは無傷な別人であるのか?』で踏み出した、岡田利規とチェルフィッチュによる新たな挑戦の第1歩が、演劇表現のさらなる広がりを予感させる。次回公演『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』は、5/7(金)より@ラフォーレミュージアム原宿にて開催。
中島良平