オーストラリアの先住民アボリジニーの間に伝わってきた、世界最古の木管楽器『ディジュリドゥ』。その奏者として精力的な活動を続けてきたGOMAが2009年11月26日、交通事故に遭った。首都高速での追突事故だった。目立った外傷はなかったものの、翌日から家族との会話が噛み合わない。診断の結果、軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害を発症していたことが判明した。
高次脳機能障害とは「高次の脳機能の障害の総称」であり、かかわる損傷部位によってその症状は多岐にわたる。GOMAの場合、それは記憶の障害としてあらわれた。過去の記憶の一部を失い、現在の記憶も定着しにくいという状況は、想像を絶する苦しみをもたらしたという。自分が何者かわからない、という不安の中でディジュリドゥを手にすることはおろか、それが楽器であるということもはじめは理解できなかった。
昨日、自分が何をしていたのか思い出せなくなることがある。だから、メモを取るようになった。必要な場合はビデオカメラをまわして記録する。精力的にトレーニングをするのは、体の疲れや筋肉の痛みがあれば、体を動かしたんだという確かな証を翌日に残すことができるから。
そんな中、彼が手にしたのは絵筆だった。
「自分は絵を描くことが仕事だと思い込んでいた」と語るGOMA。家族に絵の道具はどこにあるのかと尋ね、娘の絵の水彩絵の具を使って描き始めた。絵のモチーフは、自然と心に浮かんできたものだという。かつて、楽曲の制作に没頭していた自宅の部屋は、アトリエへと様変わりした。そこへ一歩足を踏み入れると、圧倒的な量感で作品が迫ってくる。自由な色彩と柔らかな曲線、点描のひとつひとつが揺らめきながら語りかけてくるような錯覚にとらわれる。
日本を代表するディジュリドゥ奏者として活躍してきたGOMA。表現者として踏み出した新たな一歩は、彼自身のみでなく多くの人々に勇気を与える大きな一歩だ。
GOMAによる初の個展が開催される
<[記憶]展-世界最古の木管楽器ディジュリドゥ奏者GOMAが描く絵画の世界->
● 展示会期:8月24日(火)~29日(日)
● 時間:13:00〜21:00(8/27と8/28はイベントのため17:00にて終了)
● 会場:東京・PLSMIS(東京都南青山4-17-4-1F)
● 主催:Jungle Music http://news.gomaweb.net/