コンセプチュアル・アートの過去の試みを再検討すること―。概念的な側面も強く、マリオ・ガルシア・トレスが行おうとしている表現の理解を目指すと、難解な印象はもちろんある。だが、作品を前にして“理解”という理性の行為だけを意識するのではなく、そのインスタレーションを“体験”することを目指すと、意外とすんなり身体と感覚で反応することができる。それはおそらく、『UNSPOKEN DAILIES』展に出品された新作の“物質性”によるものだろう。映写機でフィルムを回転する音からは、確かにデータとは異なる映画の物質性を感じることができるし、また、そのざらざらした画面に展開する光と影の動きは、そこに流れる時間や空気の流れをリアルに感じさせてくれる。コンセプチュアル・アートという方法論で“概念”の視覚化を行ううえで、その“概念”を“理解”させるのみではなく、身体による作品体験を導き出せる強さも持ち合わせるか否かが、彼の作品制作の鍵を握っているのだ。現在、コンセプチュアル・アートに改めて命を吹き込むために、アナログな感覚で知覚できる“物質性”の強さに着目したアーティストの、直感力も見せつけてくれる作品構成だった。
中島良平
タカ・イシイギャラリー公式サイト