プラハに行こうと決めたのは、1968年にリアルタイムで見た“プラハの春”のニュースの記憶が、ずっと燻り続けていたからだが、このほかにもいくつかのきっかけがあった。まず、1988年に公開された“プラハの春”を題材にした映画『存在の耐えられない軽さ』(フィリップ・カウフマン監督。原作は84年にミラン・クンデラが書いた同名の小説)を見て、その画面に絶えずたち込めていた、ひんやりとした空気を直に感じてみたいと思ったこと。それから地元の写真家、ヨゼフ・スデク(Josef Sudek)が1920年代に撮影していたプラハの街の写真に惹きつけられていたことをあげなければならない。プラハへはその後、“ビロード革命”成功直後の90年1月に行き、民主化された後の最初の夏、90年8月に行った。初めて行ったときとは雰囲気が一変して、観光客だらけの明るい街になっていた。スロバキアのジプシーを捕らえた写真集『Gypsies』(75年)などで知られるヨゼフ・クーデルカ(Josef Koudelka)は“プラハの春”の決定的な写真も撮っていたのだが、2008年になって、それが写真集『Invasion Prague 1968』となってまとめられた。この40年間は繋がっているのだ。
石田昌隆